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ベーカリー事業で実現させるサステナブルな社会。パンで「ツナグ」未来とは?

 

 

お   名   前:壷井 豪
卒       業:1999年
当  時  の  部  活  動:水泳部
お世話になった先生:長田治彦先生
ご   職   業:株式会社ケルン
連   絡   先: info@kobe-koln.jp
H         P:https://kobe-koln.jp

Q.現在のお仕事について教えてください。

1946年創業、兵庫県神戸市御影に本社を置く株式会社ケルンというベーカリーの代表取締役をしています。
現在神戸市にセントラルキッチンを有する直営店が8店舗あり、従業員が160名(内正社員64名)働いてくれています。
一つ人気商品を紹介するのであれば、来年で発売50周年を迎える神戸っ子のソウルフード「チョコッペ」が有名です。

会社経営の傍ら専門学校での技術講師や高校、大学等、各教育機関でのビジネス講師の仕事や、NPO法人の運営等も行なっています。

Q.なぜこの仕事を目指そうと思ったのですか?

幼少の頃から料理やものづくりが大好きだったということが理由にあるんですが、最初からパン屋さんを目指していたわけではなく、もともとは日本料理に興味がありました。
高校3年間も日本料理屋でアルバイトをしていたのですが、高校2年生の時に親から「ケルンを廃業する」という話をされたんです。


△昭和54年当時のお写真△

ただこの廃業にも条件があって、私が継がないなら廃業するという話でした。
私には上に兄弟がいるのですが、上の2人に継ぐ意思がなかったようで私のところに話が舞い込んできたんです。
その時後継ぎについて意識するようになったのですが、俯瞰してケルンというパン屋を振り返ったときにケルンの存在は地域と深い縁があって、切っても切れない関係だということを感じずにはいられませんでした。
幼少期から「神戸にはケルンがあって当たり前」というような環境の中で育ってきて、友達とかそのお母さんから遊ぶたびにずっとケルンのことを言われていたり、私の成長の過程にはケルンという存在が当たり前のように結びついていました。

2代目である父の背中を見て育った事も理由ではありますが、
一番の決め手は小学校時代、友達の親御さんが学校に迎えに来たときなどにケルンの袋をいつも手に下げていた事を誇りに感じていたからだったのかもしれません。

Q.実際に働いてみてどうですか?

イメージ通りかもしれませんが、朝も早くほぼ立ちっぱなしの仕事なのでとても体力が必要な仕事です。
しかし技術が向上し知識が増えるにつれて自分に自信が持てる様になるので、自己肯定感を肌で感じ易く、成長の実感が得られやすい職業だと思います。

Q.この仕事のやりがいは?

自身の開発した商品が多数のお客様に頻度高くご購入いただける事に日々喜びを感じます。
そのほかベーカリーという仕事を通して地域や社会の課題解決に貢献できるということがとても大きなやりがいになっています。

今はどの業界でもそうだと思うのですが、少子高齢化によって次の担い手に困っているような状態にあると思います。
これはベーカリーという事業にサステナビリティ(持続性)があるかどうかという話にもなってくるのですが、結局どれだけ素晴らしい技術がその世代で生まれたとしても、将来の担い手がいなければそれはどこにもつながっていかない技術になってしまうんです。
私は今パンの販売・製造事業をそこの問題解決に紐付けていくという取り組みをしています。
ケルンではツナグパンというサービスを全直営店で行っているのですが、これはフードロス削減と社会的弱者支援の循環型システムになっています。

ツナグパンは前日に売れ残ってしまったパンの中で、日持ちのするパンを詰め合わせで安く購入することができるというものです。
このツナグパンが一つ購入されるたびに購入してくださったお客様と支援先の福祉施設にケルン全店で使える100円分の「エシカルコイン」をお渡ししています。

 

基本的にはケルンの店舗から徒歩5~6分の場所にある福祉施設にお渡ししているので、子どもたちだけでも歩いてこれるような施設に対して支援をしています。
エシカルコインは次回から利用できる金券になっていて、今では約1万枚のエシカルコインが神戸市で使われているんです。
またツナグパンの取り組みの一つとして、食べ物の大切さを福祉施設の子どもたちに理解してもらうということも行っています。
自分の目の前にやってきているエシカルコインは誰かの頑張りやフードロス削減の思いによって成り立っていることを理解しつつ、自分の足でお店に行って買い物をするという社会的自立をシンプルな形で体験できる仕組みになっています。
私は「遠くの親戚より近くの他人」という言葉が好きなのですが、近くの他人をどれだけ大事にできてどれだけ自分の事業や仕組みに参加してもらうかを重視して「ケルンがないと困る」という人を増やしていくことができれば、事業はこれから先もつながっていくと考えています。

施設の子どもたちが18歳や20歳になったときに、自分でお金を稼いで消費者になる日がやってくると思います。
食事の大事さや人とのつながりとかを教えてくれるのがケルンのエシカルコインだったりするので、今ツナグパンに関わってくれている子どもたちは将来ケルンのパンを選んでくれるんじゃないかな?と思っています。
一人でも多くの方にケルンのファンになっていただいて、今後も継続的にご来店いただけるようにしていく事が今最大のモチベーションに繋がっていますね。
またベーカリー事業は将来独立を目指せる事もやりがいを持てるポイントです!

Q.どんな学生時代を過ごされていましたか?

ほぼ水泳部一色の学生生活でした。
入部した時点ではクロールで20mも泳げませんでしたが、最終的にはフリーの1,500mにまで出場することが出来たのは自分にとって良い経験になりました。
顧問の長田先生に厳しくご指導を受けた経験が今の自分にも生きています。

Q.仁川学院卒業後は、どのようにしておられましたか?

大阪阿倍野辻調理師専門学校卒業後、大阪や京都の老舗ベーカリーや日本パン技術研究所、ドイツはバイロイト市ルーダースベルグにあるベッカライ & コンディトライのマイスターの下で技術と文化を学びました。
帰国後すぐ父の重病が発覚し、急遽株式会社ケルン3代目CEOに就任する事となりました。
シェフから経営者に180度転換しなければいけなくなったこの時期は、人生において最も辛い日々を過ごす事となりました。
しかしその経験があったからこそ今の自分があるのだと感じています。

Q.仁川学院時代の印象に残っている思い出はありますか?

水泳部の顧問だった長田先生が印象に残っています。
今では考えられないですが竹刀を持って立っていたり、一見怖い先生ではあるんですがその中で大切なこともたくさん教わりました。
今の時代だと先生という立場でもいろんな方面に配慮しなければいけなかったり、指導するということが難しい時代だと思います。
思い返してみると長田先生には人として大事なことや必要なことなども厳しく指導していただけたように思います。
外見もそうですが私にとってはとても印象に残っている先生です。

一問一答

Q.仁川学院に入学しようと思ったのは何故ですか?

兄が通っていたということと、もともと私はカトリックで洗礼を受けていることも理由としてあります。
また学力的に仁川学院だったら行けそうと感じたことも理由の一つです。

Q.あなたが思う仁川学院の一番いいところを教えてください。

部活動のつながりが強いところだと思います。
スポーツに打ち込むことで人といい関係を築けたということをよく感じています。
部活に打ち込んでいる人たちの結束力が強かったことがとても記憶に残っていますね。

Q.もし、今の記憶のまま仁川学院時代に戻れるとしたら何をしますか?

起業をしたいです!
支援先を見つけたり、高校生とか若いときから課題解決のソーシャルビジネスを展開すると思います。

Q.仁川学院の卒業生の皆様に何かPRしたいことはございますか?

2021年の12月にフードロス削減と社会的弱者支援の同時解決を図る「ツナグパン」というサービスをケルン全直営店でスタートし、付随して誕生した木製地域通貨「エシカルコイン」が全国的に注目される事となりました。これにより、360名以上の福祉施設の子どもたちがケルンに来店し、エシカルコインによるパンの購入を楽しんでいます。→ツナグパンについて

あと2022年よりグローバルに活躍している全国の経営者を集めた「シェイク!未来つなぐ会議」というミートアップを神戸で主催し、スタートアップや事業承継者の皆さんの新たなチャレンジの場の創出に取り組んでいます。
スポンサーには上場企業も多数入っていただき、登壇者の中には新たな事業展開へのきっかけとなった方も多数おられます。
リアル、オンライン共にお申し込み参加可能となっていますので是非詳細をご覧ください!→「シェイク!未来つなぐ会議」

 

Q.最後に仁川学院学生の皆様にメッセージをお願いします。

自分の興味のあること以外にもどんどん挑戦してもらいたいと思います。
私自身大人になってから「もっと○○をやっといたらよかった…」という後悔が出てきたり、大人になってから社会とか世界の可能性に気付くことが多いです。
なので高校生のうちからいろんな可能性に気付く回数を増やしてほしいと思います。
例えば会社の人とセッションするような場所に学生のうちから飛び込んでみたりすることで、世界で今起きていることや自分が知らないけど本当は興味のあるものってたくさんあると思うのでその扉をたくさん開ける時間に使ってみてほしいです。
今の自由に使える時間がたくさんあるうちにいろんなことに触れて、いろんなことを知って、その上で将来に役立てていくのがいいのかな?と思います。

インタビューを終えて

昔から地域の人たちに愛されてきたパン屋さん「ケルン」。
壷井様から「ベーカリー事業を社会の課題解決に結びつけている」というお話を聞いたときに「どういうことだろう…?」と感じたのが率直な感想でした。
ただお話を聞いていくうちにどんどん理解が深まってきて「これはすごいことだ!」という感想に変わっていました。
難しい内容のお話も私の理解に寄り添ってとても分かりやすくお話してくださったことが印象に残っています!
壷井様のベーカリー事業や社会の課題解決に対する想いはすごい熱量で、時間を忘れるほどに楽しい時間を過ごさせていただきました!(実際に時間を忘れてしまい、予定時刻をオーバーしてしまいました…)
壷井様この度はお忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました!