本文までスキップする

音楽から教育への転身~変わらぬやりがい

 

 

お   名   前:大前繁明 様
卒       業:1999年3月
部   活   動:軽音楽部
お世話になった先生:津田のぞみ先生
ご   職   業:学校法人理事長
連   絡   先:https://www.facebook.com/shigeaki.oomae/
H         P:https://www.kouei.ed.jp/

Q.現在のお仕事について教えてください。

通信制高校と高等専修学校を運営する学校法人の理事長を務めています。

通ってくる生徒たちは、これまでの中学校や他の高校に「合わなかった」生徒です。
そうした生徒たちのために、特別なカリキュラムを用意しています。
例えば都市部に住む不登校の生徒には農業体験の授業を提供し、地域との交流を通じて自分の新たな一面を発見したり、同じような状況にいる友達と親しくなる機会を作り、高校生活を再スタートする手助けをしています。

中には苦手を抱えて自信を失い、全く笑顔を見せない生徒もいますのでそういった生徒たちへ向けて私は「苦手はあっていい、得意は必ずある、自分に合った生き方を見つけることこそが幸せへの道」ということを伝えています。

Q.なぜこの仕事を目指そうと思ったのですか?

理事長をしていた父親の跡を継ぐことになったのがきっかけです。

Q.実際に働いてみてどうですか?

「学校の理事長になる」ことが決まったときぜんぜん教育に関心がなかった自分に務まるのか心配でした(笑)
最初は軽音楽部の顧問を担当し、生徒たちと初めて話したとき自信を持てない子が多いことに驚きました。

ギターの弾き方を教える中で生徒たちが少しずつ弾けるようになり、演奏を聞いて元気を出してくる様子を見て嬉しくなったのが教育業界に関心を持ったきっかけです。
これは音楽活動をしていた頃、演奏を聴いてもらって「元気が出た」「感動した」と言われたときの喜びが今の仕事にも通じるものがあると感じたからです。
今でもこの仕事で一番好きなところは人々が元気になる瞬間を目の前で見ることができる点ですね。

反面、もっとも苦労したことは大人(教員の皆さん)の理解です。
多くの人は「勉強できない=頭が悪い」「ルールを守れない=社会で通用しない」と「学校のあたりまえ」が正しいと信じて疑いません。
なので勉強が苦手・嫌いな子供に無理やり勉強をさせようとしますし、意義目的はさておき「ルールを守らせること」に拘ります。
そうしたことが苦手で生きづらさを感じてきた子たちのための学校であり、そんな学校の理念や方針を理解してもらうことにとても苦労しました。

 

Q.この仕事で大切にしていることはありますか?

生徒の”ありのままを認める”ことですね。
通っている生徒の中には「自分は頭が悪いから勉強ができない」と自己否定に陥り、元気を失っている生徒もいます。
そんな生徒に勉強を勧めると逆に元気をなくしてしまうことが多いです。
これは勉強ができないという事実が自信を奪い、楽しさを感じられなくなってしまう傾向が多いので私が伝えているのは「勉強ができるかできないか」は一旦置いて考えてみるべきで「勉強ができないということはそんなに大きな問題ではない」という認識に変えるように伝えると、生徒は元気を取り戻してくれるんです。

多くの生徒は勉強ができないと自分はダメだと思い込んでいますが、「勉強ができなくても大丈夫」という考えに至ると、自信が湧き自然と元気が出るようになるんです。
だから私は「あなたは勉強ができないかもしれないけれど、それでも幸せになる道はあるよ」と伝えるようにしています。
一切否定せず生徒のありのままを認めて、受け入れることが生徒の元気を取り戻せる方法だと私は考えています。

 

Q.仁川学院時代に学んだことで今の仕事に生きていることはありますか?

和と善という校訓です。
この言葉は私の心に深く刻まれており、その後の行動に大きな影響を与えています。
ちなみに、私の学校の校訓もこの影響を色濃く反映していて、「人徳と仁愛」となっています。

また学生時代に抱いていた疑問が、今の仕事に活かされていると感じています。
私は学生時代、「勉強だけにこだわる」世間の風習に疑問を感じていました。
当時は「目的もなく勉強し続けるよりも、得意な道に進んだ方が幸せになれる」と考えていたので、高校3年時の受験シーズンには、大学に通う明確な目的もないまま、辛い思いをしながら受験勉強している同級生を見て不思議に思ったこともあります。
私は勉強が苦手でしたので得意な音楽の道に進み、楽しみながら活動もできましたし、バンド仲間にも恵まれました。
こうした経験があったからこそ苦手なことで自信を無くした生徒を元気づけられるきっかけにもなりました。

Q.仁川学院時代の恩師との思い出エピソードがありましたらお聞かせください。

進路の際に進学も就職もせず音楽の道に進むことについて「あなたがそうしたいなら、そうしなさい」と過度に干渉せず自分を信じてくれた当時の担任である津田先生にはとても感謝しています。
マイペースで頑固な自分の性格をよく理解してくれていたのだと思います。

Q.仁川学院卒業後は、どのようにしておられましたか?

仁川学院を卒業してから今までずっと音楽活動を続けているのですが、29歳の時に当時父親が理事長を務めていた大前学園を継ぐことになり、そこから学校経営に比重を移し今に至ります。

Q.仁川学院時代の印象に残っている思い出はありますか?

高校1年生のときにコルベ講堂で行われたチャリティコンサートに出演し、人に認めてもらえる喜びを初めて知ったことです。
当時は自分には何も取り柄がないと思っていたのでこんな自分でも輝くことのできる場所があるんだと希望を持つことができました。

この経験がきっかけで本格的に音楽の道を目指すようになり、バンド仲間にも恵まれ、楽しく活動することができました。
音楽と向き合った経験は今の仕事に通ずるものがありましたので仁川に通えてよかったと思います。

一問一答

Q.仁川学院に入学しようと思ったのは何故ですか?

姉が通っていたのと、当時は珍しい週休2日だったからですね。

Q.あなたが思う仁川学院の一番いいところを教えてください。

変に張り切っていないところ。変にアツくないところです。

Q.もし、今の記憶のまま仁川学院時代に戻れるとしたら何をしますか?

またバンドやって、同じように楽しく過ごすと思います。

Q.仁川学院の卒業生の皆様に何かPRしたいことはございますか?

お子さんが不登校になったり、発達障害の傾向があって悩んでいたら相談してください。

Q.仕事や趣味で繋がりたい方がいましたら教えてください。

教員免許持っていて、学校っぽい学校が合わない人がおられたらお声掛けください。

Q.最後に仁川学院学生の皆様にメッセージをお願いします。

やりたいことや夢が無くて悩んでいる人へ。

その昔「少年よ、大志を抱け」と誰かが言いました。
その時代から現在まで、美しい言葉だったのかもしれません。
しかし、これからの時代は「無理に大きな夢を持たなくても大丈夫」という考え方が大切だと思います。
それは「やっても無理だから諦めなさい」という意味ではなく、これからはどんなに小さなことでも、自分自身の幸せをそれぞれが追い求めていく時代だからです。

「本当の自分」を満たしてくれるものを大切にし、あんまり好きじゃないものをできるだけ遠ざけることを、若い頃は、そう在るための、努力と苦労は重ねたらいいと思います。
けれど、無理に高い志を立てたり、自分以外の誰かが決めた評価軸で頑張っても、あまり報われないんじゃないかなって思います。
ぜひ「本当の自分」を知って、大切にしてあげてくださいね。

インタビューを終えて

取材を受けてくださった大前様は、同窓会の学年幹事として日々、同窓会の行事に尽力してくださっています。 
今回のインタビューにも「母校に貢献したい」との思いからご協力くださいました。

当初は今の仕事について関心が薄く、理事長としてやっていけるか不安と語っておられましたが生徒が音楽を通じて元気になっていく様子を見て、仁川時代から始めた音楽活動で人を元気づけることにやりがいを感じていたころと同じことに気づき、徐々に興味を持たれたそうです。
音楽の道を目指される前は、自分に自信を持てなかったそうですが、仁川時代のチャリティコンサートがきっかけで自信を持てるようになり、自分の得意な道に進む幸せを見出しておられます。
自身の学生時代の経験が「人を元気づける」ことに大きく影響しているように思いました。

大前様、お忙しい中インタビューに快く応じていただきありがとうございました。