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歯科医師×映画脚本家──人を笑顔にする共通点。

 

 

お   名   前:大内 千里
卒       業:1984年卒業
お世話になった先生:川渕先生
ご   職   業:歯科医師
連   絡   先:Jidaigeki2012@yahoo.co.jp

Q.現在のお仕事について教えてください。

今は歯科医師として虫歯の治療から入れ歯づくりまで、一般的な歯科診療を幅広く担当しています。

最近はインプラントなど新しい治療法も増えてきましたが、私は昔ながらの「町の歯医者」として患者さんの生活に寄り添った治療を大事にしています。

歯医者は“痛い”“怖い”というイメージを持たれがちなんですが、実際には患者さんが安心して通えるように気を配ることがとても大事なんです。
歯の治療は生活の質に直結する部分なので、『食べられる』『笑える』『話せる』、そういう喜びを取り戻すお手伝いができるのが、この仕事のやりがいですね。

Q.なぜこの仕事を目指そうと思ったのですか?

実は最初、アナウンサーを目指して大学を受験していたんです。

でも、受験の結果を待っているときに、小学校の頃にお世話になった先生がふらっと家に来てくれて。

話をしているうちに「やっぱり歯医者の道もいいかもしれない」と思うようになりました。

先生から「実家が歯医者なら、その道も向いているんじゃない?」と背中を押してもらったのが大きかったですね。

小さい頃から自然と歯科の環境に触れていたこともあり、納得できる選択でした。

最終的に歯科医師を目指して、高校卒業後は北海道の東日本学園大学(今の北海道医療大学)に進学しました。

新しい大学で環境もなかなか大変でしたが、“おもしろそうやからやってみよう”という自分らしい挑戦だったと思います。

Q.実際に働いてみてどうですか?

虫歯や入れ歯など、さまざまな悩みを抱えた方が来られます。

結局大事なのは、技術だけでなく「人と人との関わり」なんですよね。
いくら高度な技術や機械があっても、コミュニケーションがうまくいかなければ解決できないんです。

だから自分は、患者さんとどう接して安心してもらうかをすごく意識しています。
仕事の目標としてもただ治療するだけじゃなくて、患者さんが『しっかり噛める』『普通に食べられる』という状態になるように導くこと。
必要以上の治療はせず、体の状態に合わせてケアすることを心がけています。

反面、歯科医療は国の保険制度に沿って行う仕事なのでどんなに頑張ってもできることには制限があります。
材料費の高騰や手間などといった、制約の中でどう工夫して患者さんに喜んでもらうかを考えるのは、逆に面白い部分でもあります。

Q. 歯科医師をされながら映画の脚本も手掛けていると伺いました。

普段は歯科医師として診療をしていますが、その合間に映画の脚本も書いています。

代表作は、室町時代の池田を舞台に甲賀忍者たちの活躍を描いた時代劇『池田に風カヲル』です。
時代劇の世界に携わっていた師匠井上泰治氏の影響を大きく受けて、この作品を生み出しました。

台本は土日に少しずつ書き進め、完成までに1年ほどかかりました。
ロケーションをどうするか、役者を誰にお願いするかなど、仲間と一緒に一から作り上げていく過程は本当に大変ですが、それ以上に楽しい時間ですね。

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Q. 歯科医師と映画づくり、一見全く違う世界に見えますが、ご自身ではどう感じられていますか?

私はこれまで大道芸人や映画脚本、料理人などいろんなことをしてきました。
どれも全然違うようでいて、共通しているのは「人を喜ばせたい」という気持ちです。
映画では観た人が何かを感じてくれることを目指し、大道芸では目の前で笑ってもらえるのが嬉しかった。
結局のところ、歯科医師としての仕事も「人と向き合い、笑顔を生み出す」ことにつながっているんだと思います。

Q.仁川学院時代に学んだことで今の仕事に生きていることはありますか?

仁川学院にいた頃から、“人の精神”とか“考え方”に関心があって、高校時代にその興味が深まっていったと思います。
カトリックの思想に触れることで、『自分とは違う価値観を持っている人もいる』と感じることがありました。
自分なりにカトリックのことを学びながら、“現実主義と理想主義(原理主義)のバランス”みたいなものを考えるようになったんです。
その経験は今の自分の考え方のベースになっていると思いますね。

歯科医師という仕事にとっても、“人をどう診るか”っていう視点は大事なんです。
結局、医療も昔の様な聖職の様なものでは無く対価をいただいて成り立つものなんですよね。
だからこそ『治してもらったけど納得できない』なんて思われたら意味がない。
治療の結果だけじゃなくて、その過程や患者さんとの関わり方も含めて“この先生で良かった”と思ってもらわないといけないんです。
この考え方は父からも学びました。
「治療後の仏の顔を支払いで鬼の顔が見せてはいけない」という父の言葉があって、自分の中でもそれを大切にしています。
高校時代から芽生えていた“人への興味”が、今こうして患者さんと向き合うときの基盤になっていると感じますね。

Q.仁川学院時代の印象に残っている思い出はありますか?

部活や大会の思い出ももちろんありますけど、日常の延長にある出来事が意外と心に残っていますね。

お昼休みになると、学校でパンを売りに来る業者さんがいて、その“命のパン”を友達と一緒にダッシュで買いに行ったこととか……そういう何気ない日常のほうが、意外と鮮明に覚えているんですよね。
そんな日常を一緒に過ごした同級生たちと、卒業後も月1回は集まって交流する仲になれたこと。
それ自体が、私にとって本当に大きな財産だなと、今振り返って感じています。

一問一答

Q.仁川学院に入学しようと思ったのは何故ですか?

初等部からのエスカレーターでした(笑)

Q.あなたが思う仁川学院の一番いいところを教えてください。

学びの環境が物理的精神的に優れていること。

Q.もし、今の記憶のまま仁川学院時代に戻れるとしたら何をしますか?

もちろん、思い人に告白します。

Q.仁川学院の卒業生の皆様に何かPRしたいことはございますか?

映画をぜひスクリーンで観てください。
最近は Netflix とかスマホでも手軽に観られる時代ですけど、やっぱり映画館で観るのとは全然違うんですよ。
大きなスクリーンで体感してほしいですね。

Q.仕事や趣味で繋がりたい方がいましたら教えてください。

実は役者にも興味があるんですよ。
自分自身も挑戦してみたい気持ちがあって。もし卒業生の中で役者をやっている方がいたら、ぜひ声をかけてもらえたらと思います。

Q.最後に仁川学院学生の皆様にメッセージをお願いします。

人生を通して楽しめることをたくさん見つけてください。

インタビューを終えて

歯科医師として地域に寄り添いながら、同時に映画脚本というまったく異なる世界でも創作に打ち込むお話が印象的でした。

どんな分野においても「人を喜ばせたい」「安心させたい」という思いを軸に行動している姿勢は、まさに仁川学院で培われた“人を思いやる心”の表れだと感じます。

高校時代の素朴な日常や友人との絆が今も人生の支えとなっているという言葉には温かさがあり、卒業後も続くつながりの大切さを改めて教えていただきました。

大内さん、お忙しい中インタビューにご協力いただきましてありがとうございました。